整骨院・接骨院用レセコン営業マンの日々

”元”整骨院・接骨院用レセコン営業マンの日々

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ある裁判で判明した整骨院の不正会計と裏金づくり

福岡市南区大橋に本院をもち、市内だけでなく県外でも整骨院などを多数展開する堺整骨院グループは、堺整形外科医院とタッグを組み、急成長を遂げてきた。データ・マックスでは今年、堺医療グループ分裂の真相を報じてきた。
その取材の過程では、堺整骨院の堺正孝院長が原告となり、元従業員を相手に貸付金の返還を求める裁判事件が判明していた。裁判資料から、整骨院の脱税が疑われる不適切な会計処理が浮上している。

院長が元従業員を訴えた
整骨院グループを運営するのは(株)堺整骨院西(本社:福岡市南区、堺正孝代表)で、1998年に堺正孝氏が整骨院を個人創業したのが始まり。2010年に法人化し、現在は福岡市内を中心に県外を含め、整骨院を15カ所以上運営している。300名を超える従業員を抱えるまでに成長した整骨院グループを束ねるのは創業以来、堺正孝氏だ。昨年5月、正孝氏の実弟で、(医)堺整形外科医院の堺研二元理事長が起こした名誉棄損事件をきっかけに、兄弟コンビの決裂が表面化。一大医療グループを築いていた整骨院と整形外科は今年7月、正式に分割された。

一連の騒動を取材する過程で判明したのが、兄・正孝氏が元従業員Aを相手に起こした「貸金返還請求」事件だった。正孝氏が求めたのは、Aが資格取得のために通った専門学校の学費140万円の返還。正孝氏は、Aが入学した専門学校の1年目の学費を堺整骨院が支払っていたためと主張している。

一方、Aは堺整骨院に就職する際の説明で、1年目の学費は整骨院側が負担すると聞かされており、返還の義務はないと主張。双方の主張は食い違っていた。2年以上争った結果、原告・正孝氏の主張が認められ、裁判所はAに140万円を返還するよう命じた。判決はすでに確定してAは140万円を返済しており、その妥当性は本稿では置く。データ・マックスが指摘したいのは、整骨院が拠出したAの学費の会計処理についてだ。

税理士に責任転嫁
裁判資料によると、Aは2005年10月から堺整骨院に勤務。2007年4月に専門学校に入学し、3年間資格取得の勉強をした。整骨院は06年12月と07年11月に、合わせて140万円をAの専門学校の入学金と学納金として振り込んでいる。整骨院側は裁判で学納金の支払いを証明するため、整骨院の帳簿を提示。提示された帳簿には確かに「学納金」の記載があるが、問題なのは会計処理の科目だ。Aのほか、同年度に複数名の学納金が専門学校に振り込まれているが、会計上の科目は「図書研究費その他」としている。いわゆる「経費」名目だ。常識的に考えて、会社運営上必要なものとして経費計上している費用を回収するのはおかしいのではないか。従業員へ貸し付けたものとして返還請求するなら、会計上は「従業員貸付金」として処理すべきものだ。もともと経費で計上したものを「返せ」と迫ることが許されるのだろうか。

経費として処理されているため利益を減らすことになり、それに応じて納税額も減る。「脱税」的行為と指摘されてもおかしくない処理だといえる。裁判でもAはこの点について言及しているが、正孝氏は「税理士さんの指示で、そのように処理した」と述べている。しかし、このような脱税行為スレスレの処理を税理士が指示するとは考えにくい。なお、税理士法第36条には、脱税相談などの禁止が謳われている。

経費で処理して、個人で回収?
さらに問題なのは、経費を「回収」していることにある。裁判では、Aと同じく整骨院に学費を払ってもらった従業員の陳述書が提出されていた。裁判資料によると、従業員Bは整骨院の給与から3万円天引きされていたという。その後のお金の流れを裁判官が正孝氏に質問しているが、正孝氏本人は「その3万円は法人から(正孝氏)個人に振り込まれている」と証言している。

原告・正孝氏の主張では、あくまでこの学納金は従業員への貸付であり、返還するのが妥当だとする。しかし回収したお金は正孝氏個人にわたっており、正孝氏の主張に矛盾が生じる。金銭の流れをたどれば法人が貸し付けたと考えるのが妥当で、回収した場合は法人に入るのが筋だろう。個人に渡ったとなると「裏金づくり」とされてもおかしくない。つまり、学納金を経費として計上し課税を逃れ、正孝氏個人に還流させることで表に出さなくてよい金になる=裏金だ。

一連の会計処理について話を聞くため、正孝氏に質問状を送ったが、回答期限を過ぎても返事はないまま。関係者への取材で、学納金以外での裏金づくり疑惑も浮上している。正孝氏個人が自由に扱えるお金をつくり出すためだというが、その資金がどこに流れているのかはわからないという。

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